参議院 文教科学委員会
平成21年11月17日(火)

○大島九州男君 
 それでは、教科書バリアフリー法について質問をさせていただきますが、残り時間が少ないので鈴木副大臣にお聞かせをいただきたいと思うんですが、思いがいろいろたくさんおありになるのであれだと思うんですが。
 この法案ができて、全国六十八校設置されている視覚障害特別支援学校、いわゆる盲学校の子供たちは、教科書バリアフリー法ができれば本当に、ああ、これで勉強しやすくなるんだというふうに思っていたようなんですけれど、しかし、それが実際はそのようになっていないという現状をいただいております。
 その中で問題だなと思ったのは、教科書バリアフリー法が施行されて文部科学省が定める標準規格が公表されて、教科書出版社に拡大教科書の発行の努力義務が課せられたにもかかわらず、〇九年度から新たに出版される拡大教科書は八十五点にとどまることが明らかになったと。これまで出版されていた六十九点と合わせても百五十四点で、全体の約三六%。図画工作や美術といった教科は全く発行されずに、義務教育の検定教科書を発行している十九社のうち八社は一種類も拡大教科書を発行しないというふうなことになっていると。
 その現状を受けて、弱視の高校生の子供たちのアンケートがあります。
 まず一問、教科書バリアフリー法が成立したときにどう思いましたかという質問に対して、少しでもハンディーがなくなってもっと勉強がスムーズにできるようになるかもしれないと思ってうれしかった、これからやっと勉強をしづらくなくなると思いました、そして正直本当に高校生にまで配付するお金があるのかなと思いましたとか、それに弱視の人でも見やすい教科書で勉強できるため良いことだと思った、もっと早くこの法律が成立しなかったことを残念に思うとか、大変有り難いと思う反面、本来もっと早く成立するべきものだと思ったという、そういうこともあります。
 そして二問目、教科書バリアフリー法が成立したにもかかわらず、来年度、盲学校の高等部の拡大教科書は一種類も発行されない可能性があります、このような状態をどう思いますかという質問に対して、生徒は、どこがバリアフリーなのかと思うと。また、法律ができても教科書が発行されないなら、私たちにとって何も意味がなく、現状は変わらないと思う。それから、法が決まってからどの程度で拡大教科書が発行されるかは知りませんが、なるべく早くなることを望みます。そういうことを決めている人は盲学校のふだんの様子が分かってないから先延ばしにするのかなと思いました。実際は今までこの状態で弱視の人は勉強してきましたが、大変なので少しでも急いでほしい。そして、法律が成立したのに教科書が発行されないのはおかしいと思う、名前だけの法律にしないでいただきたいという、こういう子供たちの意見を受けて、鈴木大臣の感想を。

○副大臣(鈴木寛君) 
 重く受け止めたいと思います。
 といいますのは、この法律は、委員御存じのように、元々小坂元文部科学大臣から、まさにこの文教科学委員会での与野党を超えた議論を受けて、要請状が教科書会社に発信をされました。それで我々は一度安堵したわけでございます。しかし、にもかかわらず現状が変わらないという残念な状況があって、これも超党派で拡大教科書バリアフリー法案を成立をしていただいたと。私もその輪の中に加えていただいたわけでございます。
 もちろん、法律を細かく読めば、高校についてはもう一年二年待ってということなのだとは思いますけれども、しかし、ここまでの長年の議論がありながらなおそうした努力を準備をしていないお会社というのは、まあこれはやや、何といいますか、きつい言い方になるかもしれませんけれども、私は、教科書会社として、まさに最も日本の子供たちの教育を支える社会的存在としてどういう御見識をお持ちなのかということを従来も思っておりましたけれども、今も同じような思いを持っております。
 ただ一方で、御理解いただきたいのは、教科書会社の中でも、こうした流れを受けて非常に精力的に取り組んでいらっしゃる教科書会社もありますので、そうした教科書会社に対してはこの場を借りて感謝も敬意も申し上げたいと思いますが、教科書会社の中での極めて対応にばらつきがあるということは私は看過できない。もちろん、それに対していろいろな理由をおっしゃっておられますし、我々もいっぱい聞かせていただきましたが、しかし、それはやはりいろいろな工夫で乗り越えられるべきことではないかというふうに思っております。
 このことは、国としてまさにそうした教科書業界全体に対しては四百億を超える予算を毎年拠出をしていると、こういう状況からも、私は、これはCSRの問題ではなくて、こうした教科書という非常に崇高かつ重要な仕事に携わる方々のやっぱり矜持の問題だというふうに思いながら粛々と行政を進めてまいりたいというふうに思っております。

○大島九州男君 
 もうまさしく、副大臣と我々も一緒に議論をしてきた中で、我々民主党は、義務規定、義務だと、これは子供たちのために絶対にやってほしいことだということで罰則付きでとにかく義務を課そうという法案を作ったわけですけれども、委員長提案という形の中で努力規定になったという経緯がありますので、ここのところは是非もう一度しっかりと再考していただいて、そういった罰則がなくても、先ほどおっしゃった矜持の問題で、教科書会社が独自にしっかりと努力をしていただくということを行政として指導をしっかりしていただきたいというふうに思っておりますので、引き続きそこら辺は厳しく教科書会社に御指導をいただきたいというふうに思います。
 現実的に提供される環境が整っても、盲学校の高等部では拡大教科書や点字教科書が無償であり、晴眼の高校生の費用負担は検定教科書代だけにもかかわらず、視覚障害児が一般の高校に進学した場合は検定教科書の数十倍に及ぶ拡大教科書等の費用を全額自己負担しなければならないという現実がございます。高校における拡大教科書や点字教科書等の費用負担は、原本の検定教科書との差額は国の負担とするというような措置が必要だと、我々は、民主党案ではそういったものがあったんですが、今の法案ではこういうことがないんですけれども、その点について、今後どのようなお考えかというのを聞かせていただきたいと思います。

○副大臣(鈴木寛君) 
 今の点も含めて研究、検討をしていきたいというふうに思っております。
 今回、高校の実質無償化という中で、低所得者に対しては入学金、教科書費についての奨学事業ということも要求を百二十三億いたしております。そうしたことは淡々とというか着々と進めていく中で、今の点についても拡大教科書、教科書バリアフリー法の趣旨を踏まえて研究、検討はしていきたい、ということに加えて、何よりもそうしたその生徒たちの声を最大限重く受け止めて検討をしていきたいというふうに思います。

○大島九州男君 
 ありがとうございます。
 本当に我々がその教科書バリアフリー、民主党法案を作ったときのその理念は、子供のために、本当にもし自分の子供だったら、まさにそういう困っている人がいたらどういう法律にすべきかという観点で私たちは作らせていただいたつもりでありましたけれども、いろんな諸般の事情で法律が変化をしたと。だから、これは政権が替わりまして、まさしく今副大臣がおっしゃっていただいた、子供のために、本当にその子供がしっかりと笑顔で勉強ができる環境を整えていくために是非その力を使っていただきたい。これがやはり今回の政権交代の大きな一つの意義でもあるんだというふうに強く感じさせていただいているところであります。
 世界の、国連障害者の権利条約では、障害のある児童が障害を理由にして無償のかつ義務的な初等教育から又は中等教育から排除されないこと、学問的及び社会的な発達を最大にする環境において、完全な包容という目標に合致する効果的で個別化された支援措置がとられることというふうに規定もされております。我々、この日本に住む子供たちが、本当に分け隔てなく笑顔で勉強のできる、そういう環境をしっかり整えていただいて、そして子供たちが社会に感謝をし親に感謝をする、そういった国になる文科行政を心から祈念をいたしまして、そして大臣、皆さんたちにはそういったお力を注いでいただきますことを心からお願いして、終わります。
 どうもありがとうございました。


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