衆議院 文部科学委員会
平成18年6月9日(金)
○松本(大)委員 拡大教科書の話ですね、通告の二番目に移りたいと思います。
今回の学教法の改正に伴って、私も、地元を中心に、養護学校、盲学校、聾学校、それから発達障害支援センター、療育医療センター、こういったところを視察させていただきました。きょうは、その経験を踏まえて、生かしながら質疑を進めさせていただきたいと思います。
まず、拡大教科書については、実は大臣の先日の御答弁、デジタルデータの提供を前向きに検討されるという御答弁については、「私の名前でもう一度、この委員会で積極的に答弁したということで、再度担当の方から教科書協会に対して依頼を出すということで、これを積極的にやってもらえるように私も努力したいと思います。」と、非常に前向きな御答弁をいただいて、これについて、非常に評価をされるお声が、私どもの方にも、あれには勇気づけられたという形でメールをちょうだいしました。
その中に、ただ、もう一声欲しいんだ、そこまで前向きな御答弁をいただいたことは評価するので、もう一声二声欲しいんだというお声を寄せていただいておりますので、きょうはその点についてちょっとお伺いしたいと思います。
デジタルデータの提供もさることながら、拡大教科書のニーズが高まっていって、ボランティアの方の製作負担というのが、もう供給能力をオーバーしちゃっているという問題がありまして、こんな中で、ボランティアという形ではなくて、中小の出版会社が拡大教科書の出版を請け負っている、こういう例が幾つかあるわけなんですが、そして、この中小の出版会社としても種類をふやしていきたいという要望もあるわけなんですが、実はそこに障壁があるというお声が寄せられております。
それは、補償金を支払うことで使用許諾を得るという形になっておりまして、写真とか挿絵とか文章についての著作権を一体だれが持っているのか、何人に対して払わなきゃいけないんだ、連絡先はどうなんだ、振り込み先はどうなんだ、こういう情報を入手するのが非常に困難である、これが参入障壁となっている、こういうお声であります。それで、いただいたメールの御提案としては、補償金の支払いを代行していただけないか、教科書の、もとの、原本の出版会社に代行していただけないかとか、その上で、拡大教科書の出版会社はそこから下請をする形で、実際のレイアウト編集であるとか製本、印刷、こういったことを請け負いたいということをおっしゃっているわけなんですけれども、民民の関係じゃないかというふうにおっしゃるのかもしれませんが、前回の前向きな答弁も民民の関係の中で依頼をするというお話でありましたので、ぜひこの件についても、大臣から前向きな御答弁をお願いしたいと思います。
○小坂国務大臣 この件に関しましては、私も参議院の審議を通じて、また従来から与党の委員からの御指摘もあったわけでございますが、参議院の御質疑の機会に、少し前向きに取り組む必要があるという私の気持ちをあらわさせていただきまして、言うだけでなくちゃんと実施をしなきゃいかぬということを現場に指示をいたしました。
各都道府県教育委員会の教科書事務担当者を集めた教科書事務連絡協議会というのが開かれました。これは、四月の二十八日に開いたのでございますが、拡大教科書相談窓口の設置をそこで要望いたしました。また、引き続き、文科省のホームページに新たに拡大教科書の項目を立てまして、拡大教科書の無償給与実施に係る通知と実施要領等を掲載させていただきました。これは、五月一日からさせていただきました。
また、教科書協会の検定専門委員会にワーキンググループを設置していただきまして、自社版の拡大教科書の発行に係る課題、問題点等の洗い出しを検討するように要請いたしました。これは五月末でございますが、またさらに、デジタルデータの提供について検討している教科書協会著作権専門委員会に対して、担当官を派遣しまして、五月三十一日の開催の際に、全国拡大教科書製作協議会からの拡大教科書の製作と制度の改善についてのヒアリングを実施していただきました。
さらには、拡大教科書を発行してる全ボランティア団体、八十六団体あるわけでございますが、拡大教科書の製作と制度の改善に関するアンケートを五月二十四日に実施させていただいたところでございまして、これらの調査を踏まえて、さらなる改善方策について検討を進めさせていただいておるところでございます。
また、ただいま御指摘のありました、出版社以外の出版社に対してボランティア団体が依頼をして発行する、こういうことは実際に行われているようでございます。ボランティア団体が拡大教科書を発行する場合、直接発行される場合には、原著作者に対する著作権の使用に係る補償金の支払いは不要であるわけでありますけれども、一方、営利企業である出版社が拡大教科書を発行する場合には、原著作者からの著作権使用許諾を得る必要はないわけですけれども、掲載のための補償金は支払う必要がある、こういうことになっておるわけでございまして、それは御指摘のとおりでございます。
現在、そういった出版社からの実情を伺いながら、各教科書発行社が、著作権者の一覧表を提出することについて、これは、必要に応じて教科書協会に検討を要請してまいりたいと考えておりますので、そういった実情が生じたときに直接的にまた担当させていただきたい。
なお、最後の御指摘の部分、教科書の補償金の振り込みなどの手続を教科書発行社に代行させることはできないのか、こういう形でございますが、これは、御指摘のとおり、民民の関係でございますし、また同時に、本来、著作権を使用する出版社がこれを行うことが権利者との間の契約という観点から必要でございまして、これを代行という形でここに第三者を介入させることは、やはりこれはちょっと無理があるということで、現状では無理だということをお答えせざるを得ない、こう思っております。
○松本(大)委員 私が思っていた以上に前向きな御答弁というか、誠意ある御対応をいただいているようで非常にうれしく思っております。
今、代行というのはなかなか難しいということだったんですが、例えば、では、その著作権者が何人いて、その連絡先がどこでとか、そういう一覧表を教科書会社が拡大教科書出版社に対して開示をする、そうすると補償金の支払いがより簡便になるというふうに思うんですが、そのような協力要請をしていただけるということは可能でしょうか。
○小坂国務大臣 そのことについては、具体的にそういう事例があって、こういう出版社に対してこういうことは要請できるか、こういう際に検討させていただきたいと考えております。
○松本(大)委員 既に、相談窓口を設けられて、さらに、課題の洗い出しまで行われていて、ボランティア団体からアンケートも集められるということで、その中でひょっとしたら出てくるのかもしれないんですが、あえて、どういうお声が寄せられているかを事前にお伝えしておきたいと思うんですね。
先ほどはレイアウト編集とか印刷とか製本のお話だったんですが、発送段階にもやはり問題があるというお声がありました。それは、原本を三カ所の配送センターに教科書会社から送っている、その三カ所の配送センターでボランティアの方が拡大教科書の製作者、製作を担当されるボランティアの方にまた改めて発送し直しているんだ、この発送負荷が年間何千冊にも及んでいて、もうボランティアで担当するにはぱんぱんの状態になっている、ついては、なぜダイレクトに原本を拡大教科書の作成ボランティアの方に送っていただけないのか。この配送ルート、発送ルートの見直しをぜひ検討していただきたい、こういうお声が一点寄せられております。
それから、大臣に今さら申し上げるのも釈迦に説法ですけれども、やはり、憲法二十六条、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」あるいは、今回与党案、教育基本法の改正案ですけれども、特に障害者の教育を特出しされて、「十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。」というふうにおっしゃっていらっしゃいますので、この拡大教科書がすべての方に行き渡る、しかもボランティアに過大な負担を与えない範囲内でということは、私は「十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。」とされている政府案の御趣旨にも沿っているものだと思いますので、今おっしゃっていただいたような課題の洗い出し、ボランティア団体とのアンケート聴取、こういったことを通じて、ぜひ誠意ある御回答をいただけるようにお願いをしておきたいと思います。
トップページへ戻る
「拡大教科書の公的補償について」のメニュー画面へ